学校に行かないことは、居場所を失う理由にならない。

 学校に行きたくない。そう思ったことはありますか。あるいは、学校に行きたいのに、どうしても行けない。朝になると体が動かなくなる。学校のことを考えるだけで、苦しくなってしまう。そんな日々を過ごしている人もいるかもしれません。

 学校に行っていないことを、誰かに申し訳なく思っていませんか。お父さんやお母さんを困らせている。先生に迷惑をかけている。友達はみんな学校に行っているのに、自分だけ家にいる。そんなふうに、自分を責めてはいないでしょうか。もし、そう思っているのなら、まず伝えたいことがあります。

 学校に行かないことは、悪いことではありません。

 そして、学校に行っていないからといって、あなたが安心して過ごす権利がなくなるわけではありません。

家にいることを、申し訳なく思わなくていい

 学校に行っていないと、家にいることさえ申し訳なく感じる場合があります。

 みんなが勉強している時間に、テレビを見ていていいのかな。ゲームをしていたら、怒られるかな。楽しそうに笑っていたら、「学校には行けないのに、遊ぶ元気はあるんだね」と言われるかもしれない。

 そんなことを考えながら過ごすのは、きっと疲れてしまいます。

 でも、学校に行けないことと、家で笑えることは、矛盾しません。学校では苦しくても、好きなことをしている時間には笑うことができる。人と会うのはつらくても、ゲームはできる。

 それは、おかしなことではないのです。

 学校に行っていない時間を、ずっと反省して過ごす必要はありません。何かを頑張っていなければ、家にいてはいけないわけでもありません。

 休んでいる時間にも、あなたの生活があります。

子どもの将来が心配な大人たちへ

 ここからは、保護者をはじめとする大人のみなさんに向けて書きたいと思います。

 子どもが学校に行かなくなったとき、子どもの将来が心配になるのは自然なことだと思います。勉強についていけなくなるのではないか。進学や就職はどうなるのだろう。このまま家から出なくなってしまったら、どうしよう。

 心配するからこそ、学校に行ってほしいと願うこともあるでしょう。

 けれど、その心配が、子どもにとって「学校に行かない自分は、ここにいてはいけないのかもしれない」という気持ちにつながっていないでしょうか。

 学校に行くように説得され続ける。学校の話になるたびに、家の空気が重くなる。勉強していないことや、楽しそうに過ごしていることを責められる。

 そうした日々の中で、子どもは学校だけでなく、家でも安心できなくなるかもしれません。子どもの未来を心配することと、子どもの今を大切にすることは、両立できるはずです。将来について考えることを、やめなくてもいい。

 ただ、その前に、今日のその子が安心して過ごせているかを考えてみてほしいのです。

家にも学校にも、居場所がないとしたら

 もちろん、すべての子どもにとって、家庭が安心できる場所であるとは限りません。家庭の事情や家族との関係によって、家にいること自体が苦しい子どももいます。

 学校にも行きたくない。家にもいたくない。

 そんなとき、子どもはいったいどこへ行けばいいのでしょう。

 わたしは以前、子どもの居場所に関わる仕事がしたいと考えていました。けれど、子どもが安心して過ごせる場所について考えるうちに、家庭を取り巻く問題にも目を向けるようになりました。

 例えば、保護者自身が経済的な困難を抱えていたり、家庭内の負担を一人で背負っていたり、暴力や差別の中で暮らしていたりすることがあります。

 そうした状況が、親子の関係に影響することもあります。

 もちろん、子どもが家庭でつらい思いをする背景には、さまざまな事情があります。また、大人がどれほど追い詰められていても、子どもへの暴力が許されるわけではありません。

 そして、子どもの居場所を考えるなら、その子が帰っていく家庭のことも考えなければならないと思うのです。昼間、安心して過ごせる場所があったとしても、夜になれば、また安心できない家に帰らなければならない子がいるかもしれません。

 子どもが安心して過ごせる社会をつくるには、子どもだけを見ていても足りない。

 子育てや家事の負担が女性に偏りやすい社会では、女性が置かれている状況も、子どもの暮らしと無関係ではありません。そして、家庭に帰ること自体が危険な子どもには、帰宅以外の安全な選択肢も必要です。

居場所は、大人が決めるものではない

 子どものために居場所をつくろう。そうした取り組みは、とても大切だと思います。

 でも、わたしは「子どもの居場所をつくってあげる」ということばに、少し立ち止まりたいのです。

 大人が「ここはあなたの居場所だよ」と決めたとしても、本人がそこにいたいと思えなければ、それは本当に居場所と呼べるのでしょうか。人がたくさんいる場所が好きな子もいれば、静かな場所が好きな子もいます。誰かと話したい日もあれば、ひとりでいたい日もあるでしょう。

 だから、子ども自身が選べる場所を増やしたいのです。自分で行きたいと思える場所。ここにいたいと思える場所。そして、離れたいと思ったときには、離れることができる場所。

 そこにいることも、いないことも、自分で決めていい。

 居場所とは、本来そういうものではないでしょうか。

学校に行かなくても、学びたいことはある

 学校に行っていない子どもが、勉強をしたくないとは限りません。学校には行きたくないけれど、算数は好き。教室に入るのは怖いけれど、本を読むのは好き。みんなと同じペースで勉強するのは苦手だけれど、興味のあることなら、いくらでも調べていたい。

 そんな子どももいるでしょう。

 それなら、学校以外で学べる方法がもっとあってもいいのではないでしょうか。オンラインで、わからない問題を質問する。好きな本を読んで、誰かと感想を話す。絵を描いたり、文章を書いたり、ものをつくったりする。

 もちろん、今は何もしたくないという子もいるでしょう。それなら、何もしなくてもいいと思います。

 学びたいと思ったときに、学べる。何かを始めたくなったときに、始められる。

 そのための選択肢が、あらかじめあればいいのです。

子どもの選択肢を増やすのは、大人の仕事

 わたしたち大人は、子どもの将来を考えるとき、つい「どの道を選ぶべきか」を考えてしまいます。

 学校に戻るべきか。

 進学するべきか。

 どんな仕事に就くべきか。

 けれど、そもそも子どもが選べる道は、十分にあるのでしょうか。

 お金がないから、やりたいことを諦める。近くに学べる場所がないから、興味のあることを諦める。学校に通っていないから、自分にはできないと思ってしまう。

 そんなとき、子どもに諦めることを教える前に、大人ができることはないでしょうか。

 お金がないなら、費用を負担せずに参加できる仕組みを考える。

 通うことが難しいなら、オンラインで参加できる方法を考える。

 近くに機会がないなら、新しく機会をつくることを考える。

 もちろん、何でもすぐに実現できるわけではありません。それでも、最初から「無理だ」と決めつける必要はないと思います。

 選択肢を増やすことと、選択を迫ることは違います。

 たくさんの道があっても、今すぐどれかを選ばなくていい。何も選ばない時間があってもいい。大人の役割は、子どもの進む道を決めることではなく、子どもが自分で選べる道を増やすことなのだと思います。

CAFEあいあむが、これからつくる場所

 CAFEあいあむには、記事を届ける編集部のほかに、学び部と創作部があります。

 学び部では、本を読んで、感じたことを自分のことばにする「もじもじラボ」を育てています。創作部では、物語やイラストなど、さまざまな表現を届けていきます。

 そして、学校に通っていない子どもたちが、学校の教科についてわからないことを無料で質問できる、オンライン寺子屋をつくります。

 学校には行きたくない。でも、算数は勉強したい。そんな子が、気軽に「ここがわからない」と聞ける場所です。

 オンライン寺子屋は、現在早期開設開設に向けて準備を進めています。開設時期や参加方法など、詳しいことが決まりましたらお知らせします。

 将来、CAFEあいあむが実店舗を構えたら、学校のある日の昼間に、子どもがふらっと立ち寄れる場所にもしたいと思っています。

 カウンターでドリルを広げている子がいて、「ねえ、ここわかんないんだけど」と声をかけてくれる。

「オレンジジュース飲む?」

「クッキーも焼いたけど、食べる?」

 そんな何気ない会話が交わされる場所。もちろん、勉強をしなくてもいいのです。本を読んでもいい。何かを描いてもいい。ただ座っていてもいい。何かを買わなければ、そこにいられない場所にもしたくありません。

 CAFEあいあむが目指しているのは、子どもに新しい進路を決めてあげることではありません。

 一人ひとりが、自分で選べる道を増やすことです。

 学校に行っていても、行っていなくても。将来の夢があっても、まだ見つかっていなくても。何かを始めたい日も、何もしたくない日も。

 あなたの毎日は、あなたのものです。

 そして、どんな道を選ぶとしても、安心して立ち寄れる場所が、社会の中にたくさんあってほしい。CAFEあいあむも、そんな場所へと育っていきます。

今、安心できる場所がないあなたへ

 家や学校でつらい思いをしているとき、一人で抱え込まなくても大丈夫です。

 CAFEあいあむでは、子どもが自分で相談できる窓口についてまとめたものを記事で公開しています。 →こちら

 それまでの間も、すぐに助けが必要なときは、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」などに相談できます。今まさに危険な状況にある場合は、110番に連絡してください。また、こども家庭庁が案内している「親子のための相談LINE」でも相談できます。こちらは匿名可能で、秘密厳守となっているので、不安のある場合はこちらに相談してみてください。

この記事を踏まえて

 CAFEあいあむが、なぜ子どもの居場所づくりを事業として育てようとしているのか。

 子どもたちが無料で学べる場所をつくり、いつか、ふらっと立ち寄れるお店を開きたい。そのために、わたしたちは収益を生み出すことも大切にしています。

 その考え方については、別の記事で詳しくお話しします。

この記事を書いた人: 舞
この記事を編集した人: CAFEあいあむ編集部
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